ー高山さんは勝海舟の研究をなさっているということですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。

 高山:私自身が、勝海舟の子孫で5代目で、あるとき子孫の会というのがありましてそこに参加して、北海道を訪ねたのですよね。そこで、歴史家であり、海舟についての本も書かれている北川先生の講演を聴き、面白いなぁと思ったのです。で、「高山さん、勉強だよ勉強。子孫ならちゃんと勉強しなさい」と言われたのがきっかけで、いろいろ書物をよんだり、ゆかりの地を訪ねたり、いろいろな子孫の会で交流したりして勉強しています。

 ー子孫の会とは、どのようなものなのでしょう。

高山:子孫の会もいろいろありまして。勝海舟の会もあれば、咸臨丸に乗って渡米した人達、ジョン万次郎や福沢諭吉とかですよね。その咸臨丸子孫の会、とか龍馬会とかあるのです。で、そうするとそれぞれ、その子孫ならではの資料があったり、言い伝えがあったりして、話したりするとそれがつながっていくのですよね。

 ー勝海舟の研究のどのようなところが魅力ですか?

 高山:歴史上の人物というと、皆さん、とりあえず教科書で習ったり、誰かが書いた本や、ドラマがあったりしてなんとなくのイメージがあったりするとおもうのです。でもそれは誰かが考えたもの。でも、実際の史実を見たり、ちょっとした、メモ書きなんかを拾っていくと、一般論からは違った人物像が浮かんできたりするのが、面白いですね。そして、よく「史料に呼ばれる」という言い方をするのですけれど、ゆかりの地を訪ねていたりして、前から頭の隅に引っかかっていたもの、調べていて分からなかったり、史料が見つからないままだったりしたものが、ふと思い出され、ここにあるかも、見たいな、ひらめきに近いような感じ、で途中下車してみると何かきっかけのようなものに出会ったりすることがあるのですよ。あぁ本当にそうだったんだ、みたいな。そういうときはパズルが繋がるかのようでゾクゾクっとしますね。そして例えばこの商家の庭で海舟と龍馬がお茶を飲んでこの風景を見ていたのだなぁ…等とおもうとちょっと感激したりします。

 ー海舟の好きだった物はどんなものでしょうか?

 高山:贔屓にしていて今でも営業している横須賀の鰻屋さんとか、いろいろあるのですけれど、面白いところでは、パンやチョコレート、ケーキ、アイスクリームとかが好きだったようです。新し物好きですよね。渡米して食べたものがよほど印象に残ったのでしょう。パンは銀座木村やのアンパンとか。この話は、母が祖母、祖母が海舟の孫にあたるのですけれど、、からよく聴かされていたのですが、最近になって文献にそう書かれていたりして。本当だったんだなと。あと、海舟の息子の嫁にクララというドイツ人がいるのですが、ある日海舟にパンを焼いて持っていったんですよね。ところが海舟は外出中で、家族はすっかりそれを食べてしまった。そこに海舟が急に帰宅して、あわてて家族から、クララにもう少し届けてもらえないかというお願いの手紙が残っていたり。今と違ってお父さんは一家の主ですからね、家族のあわてぶりとか想像すると笑えませんか?しかも好物のパンを食べちゃった、パンも今と違って貴重なものだと思うと…。そして教科書に書いてあるような人の家でも、日々の営みはそんなもの。いつの時代も人は食べて生きていますから、食べ物を通して考えるとぐっと身近に想像しやすいですよね。

 ー高山さんご自身の食にまつわる行動で、海舟の影響?みたいなことありますか?

 高山:海舟の家にはお菓子部屋なるものがあって、甘いものをしまっておくお部屋があったのです。で、私の祖母も必ず頂き物の甘いものとかをすぐ食べることはしなくて、ちょっと寝かすというか、しまってころあいをみて食べる、こういうときに食べる、とか、誰と食べるとかそんなことを考えながら食べる感じだったんですよね。で、私も、もちろんお菓子部屋なんてありませんけど、甘いものは置く場所が決まっていて、そこに一旦片付けないと気がすまないというか…で、ここ、という時に食べるみたいなのはありますね。どうでもいいことなんですけれど、なんとなく染み付いているという感じでしょうか。

 ーありがとうございました