今回の海山レポートは、葉山のオーシャンファミリー海洋自然体験センターで行われている海辺の子ども育成活動の中の『おやこえんさざなみ教室』です。
オーシャンファミリー海洋自然体験センターとは、海洋生物学者の故ジャック・T・モイヤー博士が1985年に三宅島で始めたサマースクールがそもそもの始まりなのだそう。
・海は楽しく、面白い。
・海は素晴らしい。
・海は大切だ。
という博士のメッセージを大切にし、海の環境教育に関する事業を行ったり、地球環境の保全と持続可能な社会作りを目指し活動しています。
具体的には、葉山の海と山をフィールドに子どもから大人まで幅広い層を対象としたざまざまな海の楽しみ方を伝える海辺の地域の子ども教室の開催や、海辺の自然活動指導者養成などを行っています。
その中の一つ『おやこえん さざなみ教室』は未就学児の子どもが、月に一回、親子で海や自然を思う存分楽しむ「海辺のようちえん」。自然に直接触れる機会を持つことが「ドキドキ」「わくわく」といった感性をくすぐる体験となります。
夏休み初日の7月20日、葉山公園入り口近くにあるオーシャンファミリーのセンター事務所(セミナーハウス)を訪ねました。
そこは、かつて漁師さんが使っていた趣のある古民家。縁側や2部屋続きの広い和室があり、なんだか田舎へ遊びにきたようです。
庭には所狭しとカヤックやサーフボードがたくさん並んでいました。
オーシャンファミリーのスタッフは代表の海野義明さんの他に指導者7名、そしてボランティアが50名。今日はキャプテンの津田さんの他に大人が4人。皆さん海がベテランのボランティアです。
午前10時、お父さんやお母さんに連れられて、5組の親子が集まりました。
ピョンピョン跳ねまわっている元気な男の子もいれば、恥ずかしそうにお父さんやお母さんにくっついている女の子もいます。3歳から5歳までの可愛い子どもたち。
まずは着替えなどを済ませ和室に集合。キャプテン津田さんから「今日はおふねに乗ります。お父さんやお母さんと力を合わせてお舟を漕いで、離れ島へ行ってお弁当を食べましょう。そして、離れ島には宝物があるので、みんなで見つけましょう!」と話があり、出席をとります。熱中症などの注意事項などの話をした後、ライフジャケットを着ていよいよ海岸へ出発!!
カヤックを持ち運び用の2輪車に乗せ、車に注意しながらゴロゴロと海岸まで歩いて運びます。
この日、長者ヶ崎の海岸は穏やかで波もほとんどなく、カヤックをするにはもってこいのコンディションでした。
海岸に着くと、「よし、足だけ海に入ってみよう!」とまずはみんなで足先を水につけてみます。「冷たーい!」と言いながらみんな嬉しそうです。
それから、パドルの持ち方やカヤックの漕ぎ方をリーダーが教えてくれます。
「これはパドルといいます。スコップじゃないよ!ふねを漕ぐ道具です。」と子ども用の短いパドルを子どもたちに渡します。
大人も大人用のパドルを持って「自転車みたいに握って、右、左・・・」と練習です。
前進、方向転換、ブレーキの方法を練習し、まずは大人だけカヤックで海へ出て少しだけ練習します。
浜に残った子どもたちは、波打ち際で「いってらっしゃーい」と見送り、石投げをして遊びながら待っています。
大人が帰ってきたら、いよいよ親子でカヤックに乗り離れ島まで漕ぎだします。
最初からたくましくお父さんと一緒にパドルをかいている子もいれば、お母さんの膝の中にスッポリ入ってじっとしている子もいて、子どもたちの反応は色々です。
しばらく漕いで振り返るといつの間にか遠くに海岸が!!
沖から海岸を見るなんて、あまり無い経験で、これもまた新鮮でいいものでした。いつもの海岸が違って見えます。
パドルをゆっくり漕ぐこと30分、離れ島に到着しました。離れ島とは、実は長者ヶ崎の先端のこと。カヤックを降りて砂浜に並べ、お昼ごはんを食べる場所まで、砂浜と小石の波打ち際を歩き、長者ヶ崎海岸が遠くに見える岩場へ着きました。
岩場に座ってお弁当を広げます。
食後は貝殻やヤドカリなど色んな宝物を見つけながらたっぷりゆっくり贅沢に親子の時間を過ごしました。
そろそろ帰る時間…。
驚いたことに来る時とは違い、帰りはいきいきとパドルを漕ぎながら満面の笑みで手を振る女の子や、自ら前に座り自分の意思で颯爽とパドルを漕ぐ男の子など、たった数時間の間にすっかり自信がついた子どもたち。
中にはお母さんの膝の中でグーグーと眠ってしまった大物も!
セミナーハウスへ戻り、庭で水を浴び着替えたら、再び和室に集合し、1日の振り返り。
子どもは絵日記を書き、大人はそれぞれ今日の感想を話しました。
この時間、大人は子どもを海につれてきた時こんなことに注意すればいいのか、など日頃の海遊びに関する悩み事などの相談の場にもなるのだそう。
このさざなみ教室に入った事で、週末になると天気や潮回り、風向きなどを調べるようになったお父さんもいるそうです。
参加した方にお話をうかがってみました。
:同年代の子と楽しめそうだったのと、海が好きになってほしいという思いで参加。
毎月子ども以上に親自身が楽しんでいる。そんな姿を子どもに見てもらいたい。
:以前はカヤックで泣いていたが、今日は楽しんでいる姿を見て成長を感じた。
:くらげに刺されたが、海には怖いこともあるということを知ってもらえて良い経験になった。
:毎月参加することで海が好きになってくれて、ここに来た時、子どものいきいきとした姿を見ることができで嬉しい。
キャプテンの津田さんが「おやこえん さざなみ教室」で大切にしているのは、小さいうちは満足するまで好きなことをすること。大人があれこれ口出ししたり、決めたりせず、ひたすら見守ることなのだそう。そして、子どもが話しかけてきたら必ず答えること…。
オーシャンファミリーのスタッフは皆さんそれを徹底されているそうです。
確かに、今日1日一緒に過ごしていて「あぶないからだめ!」「○○しなさい」という言葉は一度も聞きませんでした。
キャプテンの津田さんは、どこかチャーミングな方で、子ども達と話す時、友だち同士のようでいながら子どもたちを大きく包み込むような温かさがあり、子どもたちに安心感を与えます。そんな中で子どもたちは自由にのびのびと海遊びを満喫していました。
オーシャンファミリーでは『おやこえん さざなみ教室』のほかにも小学生のクラスや大人の指導者養成のためのクラスなど様々な種類があります。
詳細はHPをご覧ください。
データ
名称:NPO法人オーシャンファミリー海洋自然体験センター
代表:海野 義明
TEL:046-876-2287
FAX:046-876-2297
HP:http://oceanfamily.jp